パーソナルトレーナのためのコラム

パーソナルトレーナのためのコラム

コロナ渦におけるフィットネスビジネスの再考〜オンラインパーソナルトレーニングについて

 

新型コロナウイルスの感染拡大

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い発出された、2020年4月7日の非常事態宣言により私たちの生活は大きく変化した。 特に経済活動については、ほとんどの業種において負の影響を受け、ビジネスモデルの再考を迫られる事態となった。

 これはフィットネス業界においても例外ではなく、対面による店舗型ビジネスモデルである 総合型フィットネスジム、パーソナルジム 、ヨガ・ピラスティス等のグループレッスン においても多くの店舗が休業に追い込まれ、かつて私たちが体験した事のない状況となった。

コロナ渦でのオンライントレーニング

 この状況の中、大手から中小のパーソナルジムを含め、一斉に実施したサービスが「オンライントレーニング」だ。 オンライントレーニングは現在のリソースを活用しながら、ZoomやLINEなどのツールを使用してサービスを提供できることからコロナ禍で既存のジムの多くが参入した。

しかし、オンライントレーニングで収益を上げることができたジムはあるでしょうか?
 
殆どのジムが収益を上げることが出来ず、ましてやオンライントレーニングを 新たなビジネスモデルへの転換 にする事が出来なかったのが現実だ。なぜこのような結果になってしまったのか。要因は様々あるがここでは【単価】と【過負荷の原理】の観点から考察していこうと思う。

【単価】問題

 通常、店舗等での対面で行うパーソナルトレーニング、1セッションの料金は5,000〜15,000円が相場だが、オンライントレーニングでの単価はこれらを大幅に下回る。パーソナルジムでは1セッションの料金=単価は重要になってくる。
 
 2020年4月ごろのオンラインサービス提供開始時には、店舗と同水準の金額で提供しているジムもあったが、その後は多くのジムが単価の値下げを余儀なくされた。私たちの運営するジムでも既存会員様向けに無料でオンライントレーニングサービスを提供したが、その際のアンケート結果では64.7%の方が3,000円以下の金額が妥当という回答だった。(Zoomを利用したLIVE型50分マンツーマン)
 
 1セッション3,000円以下の単価では損益分岐点を大幅に下回り、事業として成立しないのは明らかだ。
そこで『セミパーソナル』という形で1人のトレーナーが複数のクライアントを同時に担当する形も考えられる。セミパーソナルは収益の点では、仮に1セッション3,000円で5名のクライアントを担当できれば15,000円の売上げを出すことが可能となる。しかし、顧客満足度の点では、1人のトレーナーが同時に複数のクライアントに対応するため コミュニケーション、フォーム修正、個別に具体的なアドバイスを行う といったことが難しくなり、店舗でのパーソナルトレーニングを経験しているクライアントからすると満足度は下がるだろう。これらのパーソナルケアはパーソナルトレーニングの利点であり、クライアントの継続率に直結する点である。オンライントレーニングという目新しさで当初は集客できたとしても継続率を維持するのは非常に厳しい。
 
  また、オンラインで1人のトレーナーが複数のクライアントを担当する場合はグループレッスンに近い形となりLIVEで行う必要性も低いと考えられる。そのため、YouTubeやフィッネス系アプリなど無料または安価でトレーニングを受ける事が可能なコンテンツと競合することになり、その差別化は難しくなる。
 
 このような点からオンライントレーニングはクライアントとサービス提供者との間で、その金額について未だに大きな乖離があり、突き詰めると、単にオンラインを利用した既存のパーソナルトレーニングに対してのクライアントの満足度は低いと考えられる。

【過負荷の原理】

 トレーニングを少しでも本格的に学んだ方ならご存知かもしれないが、トレーニングには3原理5原則(全てを原則と捉えるなど様々な考え方がある)というものがあり、その原理の1つに「過負荷の原理」といわれるものがある。
 
「過負荷の原理」とはトレーニング効果を出すためには一定以上の負荷を与える必要がある。という考え方である。例えばベンチプレスで30Kgの重量を問題なくできる人が同じ重量でトレーニングを継続してもトレーニング効果は薄くなるといったことだ。それはトレーニングを継続することによって人間の身体が負荷に適応していくためであり、このようなことからトレーニングでは徐々に負荷を増やしていく事が必要となる。
 
  しかし、オンライントレーニングでは基本的に自重負荷メインの種目を行うことが一般的であるため「過負荷の原理」に沿ったトレーニングを行うことは難しくなる。負荷になる道具を使用できたとしてもチューブや比較的軽いダンベル程度ではないだろうか。もちろん、負荷のかけ方には レップ数・セット数を増やす、インターバルの短縮、動作スピードのコントロール、トレーニング種目の難易度を上げる などのやり方もあるが、やはり重量により負荷を増やしていくことが難しいオンライントレーニングでは「過負荷の原理」を実践することはトレーナーとして高度な知識と指導力を必要とするだろう。
 
 また、「過負荷の原理」はクライアントの心理にも大きく影響するものであり、高度な目的を有しているアスリートなどを除いて、大多数の一般のクライアント(特に初心者)にとっては『ゲーム感覚のように扱う重量が増えていく』ということはモチベーションに大きく影響し、トレーニングを継続する動機付けになる。
 

まとめ

 オンライントレーニングについて【単価】【過負荷の原理】の観点から考察したが、それ以外にも様々な要因がオンライントレーニングの普及の障壁になっていると考えられる。単に通常の店舗でのトレーニングをオンライントレーニングに置き換えるだけのサービスではクライアントの満足度を満たすことはできていないのが現状である。この点については トレーナーの知識、指導力、コミュニケーション能力 に高いレベルが求められるのは当然であるが、アメリカで爆発的に普及しているオンラインフィットネスサービス「Peloton」のように、ゲーム感覚でユーザー同士が競い合うことができるコンテンツ、目的に応じた豊富なコンテンツ、専用のデバイス などクライアントの満足度を十分に満たすサービスも登場している。

 今後もコロナ禍の中で一定数のオンライントレーニングの需要はあると考えられるが、新たなビジネスモデルとして収益をあげるには多くの課題があり、ソフトとハードの点からの再考が必要である。これはオンラインやオフラインに関係なく、最終的に私たちが向き合うべきは顧客満足度であることは間違いないといえる。

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